大橋 照枝
2007年09月30日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2007年09月30日 |
大橋 照枝 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.82) |
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危機に立つ家族 四方寿雄編著 ミネルヴァ書房 一九八七年
マーケティングの究極目的は生活者に満足や幸福をもたらすことであるが、それによって環境破壊や将来世代の取り分を先取りしてしまうことがないこと、つまり「持続可能性」(サスティナビリティ)をおびやかすことがあってはならないということが大前提である。
ところが、日本の経済や社会の仕組みは、環境や将来世代の生存権よりも、今の経済、つまりGDP(国内総生産)の拡大第一主義といえる。例えば、食の分野では、毎年日本では食べ残しが十一兆円(年間の農業および漁業の生産額に等しい)もあるというのに、食育基本法や食育基本計画では食べ残しの問題に何ら触れられていない。廃棄するほど大量に消費する方が、経済が大きくなるからだとの考え方であろうか。
住の分野でも、東京や大阪などで増加する超高層マンションは、地震などで停電や断水した場合の備えがない。つまり持続可能ではないが、経済の拡大には大いに役立っているためか、誰もが正面切って指摘しようとしない。
本書では、「第二章 消費社会の進展がもたらす家族の危機」の中で、第二次世界大戦後の日本の住宅問題の歴史を追いながら、住宅問題が家族の病理現象とも深く関連してきたことを、多くのデータや事例をあげながら解明している。