奥田 和子
2007年06月30日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2007年06月30日 |
奥田 和子 |
住まい・生活 |
食生活 |
情報誌CEL (Vol.81) |
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インターネットのヤフーやグーグルで「孤食」を検索してみると、孤食者のわびしさや嘆きが伝わってきて胸がつまる。伴侶のいない高齢者、下宿学生、親元を離れた独身者、単身赴任の父親などである。大人でさえこの深刻さだから、まして子どもはより深刻にちがいない。ここでは誌面の都合上、未来の多い子どもたち(乳幼児と学童)の孤食に限定して述べてみたい。
なお、家族がたとえ一緒でも、別々の時間帯に食べる場合の「孤食」も含める。ただし、家族がめいめい違う料理を食べる(父親はさしみ、子どもはトンカツ)「個食」はここでは除外する。
孤食はできればやめたい
なぜやめたいか、主な理由を次に五つ述べる。
1)食べ物をめぐる情報伝達の機会を失うから
食卓では、食べ物をめぐる話に花が咲く。食べ物はそれ自体がコミュニケーションのツールになる。食材(産地、種類、名前)、料理のおいしさ(出来損ないのわけ、コツ、味付け)、買い物(値段、相場、コツ)。
(2)親の思いを伝える機会が失われるから
話をしながら、食べ物の神秘、生命の尊さを知らせ感謝の気持ちを育てる。食べること、生きることの意味を学ばせる。たとえば、亡くなったおじいちゃんのこと(病気がちのおじいちゃんが嫌いな人参をがんばって食べ始めた頃から急に元気になり九〇歳まで生きた)。お父さんのこと(この食べ物はお父さんの働いてくれたお金で買った。仕事が大変で帰りが遅いが「お疲れさま、お先に」という挨拶をしてから食べる)。
3)会話の中で食べ方の知恵やマナーを学ぶ機会が失われるから
なぜ、そうするかという「わけ」や「ものの道理」を聞かせる。食卓は世代、性別を超えて分け隔てなく交流する唯一のコミュニケーションの場である。食べる順序、箸の持ち方、魚の骨のはずし方、食事中に家族を喜ばせる裏ワザとヒケツなど。
(4)一人で食べるとおいしくないから
早食いになる。間がもたないのでテレビや漫画を見ながら漠然と食べる(噛まない・餌・うわの空・味わわない)。楽しい食事は気持ちが前向きになるが、孤食は喜びや幸せ感がないのでおいしくない。
(5)一人で食べると悲しいから
なぜ、自分は一人で食べるのかと苦痛で、暗い気持ちになる。雨や風の日は特にそうだ。親の無責任を感じる。心から親を愛せなくなり、情不安定。誰にも自分の思いを聞いてもらえないので、ストレスがたまる。人を愛する原点である「親からの愛」が乏しい。