ここは大阪・梅田にある料理教室の一室。この日のメニューに関する女性講師の説明に、受講者全員が熱心に聞き入っている。席を埋めているのは、年配の男性ばかりだ。

　一つの調理台に三〜四人ずつの数グループで、全員で二〇数名。講師の先生の説明が終わると、グループごとに、この日の献立「新じゃがと豚肉の照り煮」「筍ごはん」「さわらの木の芽焼き」の調理にとりかかる。

　レシピの紙と首っ引きの人もいれば、回ってくる先生をつかまえて、「どれくらい入れたらいいの？」と尋ねながらの人もいる。男性同士もグループ内で互いに役割を分担。チームで作業をこなすという様子で、どこか職場のような雰囲気も。

　教室を運営するベターホーム協会（本部東京）は、一五年以上前から「男性の料理」に取り組んできた。現在は一斉に定年を迎えつつある団塊世代に注目している。

　同協会大阪事務局の山中陽子さんは言う。

　「健康に老後を過ごすためには、やはり食の管理が大切です。男性の方にも、生活の基礎技術としての料理のノウハウを身につけてほしい。今は″男子厨房に入らず　の時代ではありませんので、最初の一歩さえ踏み出せば、新鮮な仲間の方々と楽しく学ぶことができると思います」

　教室の男性は、まさにそんな人たち。