弘本 由香里
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2007年03月30日 |
弘本 由香里
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都市・コミュニティ |
都市居住 |
情報誌CEL (Vol.80) |
多様なライフコースを支えるヒューマン・ネットワークの必要性 |
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はじめに
徹底して当事者の声に耳を傾け、一人称のつぶやきを丹念に集めて、公共の課題へと相対化していく。地域に生きる一人ひとりが直面している問題を、地域の課題としてとらえ直し、協働で課題解決に取り組む方向性を模索する先駆的実践として、前回(第九話)「生野区地域福祉アクションプラン」(二〇〇六年四月策定)を紹介した。生野区をフィールドに一人称を起点としながら相対化され公共化された気づきは、決して生野区だけの課題ではないことを、同プランは、貴重なつぶやきの数々によって物語ってくれた。例えば、高齢者の暮らしをめぐる悩みのありようは、現代の高齢者が直面する問題を鮮明に浮かび上がらせるものでもあった。「することとできること(役割)が少なくなってきました」、「気軽に集まり人とふれあうことが少なくなりました」、「家に一人でいることが多く、話し相手もいません」、「訪問販売や詐欺事件が多く、不安です」、「入院時や災害時に頼れる人がいません」、「介護のことや施設の状況がわかりません」、「在日韓国朝鮮籍で年金・介護・交流で困ることがあります」といった声。いずれも地域における暮らしの孤立化という、深刻で普遍的な問題を根に持っているものである。その解決のために、地域の有形無形の資源を活用しながら、高齢者はもちろん、多様な世代が地域とつながる場や仕組みを、地域の中に幾重にも編みこんでいくことが求められていることがわかる。そうした気づきを大阪都心部に向けてみれば、流動性の激しさや匿名性の高さからも、いっそう暮らしの孤立
化が進みやすい環境であることは容易に想像できる。一方で、活用可能な多様な資源の集積があることもまた確かである。その両面性を持つ大阪都心部の地域と生活者に、少子高齢化という社会の大きな構造変化は、どのような影響をもたらし、何が必要とされようとしているのか。