野沢 正光
2007年01月31日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2007年01月31日 |
野沢 正光 |
エネルギー・環境 |
エネルギー・ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.79) |
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はじまりは三〇年前
これまで私は、環境に対して「建築」が担う役割の重要性を唱え、地域の気候特性を読み、自然エネルギーを受動的に利用するパッシブデザインや持続可能な建築のサスティナブルデザインなどの環境デザイン手法を取り入れた、環境に配慮した建築を設計してきました。同時に、さまざまな環境技術の研究、実践、普及活動も進めてきました。その代表的なものの一つがOMソーラーのシステムです。今から約三〇年前、一九七三年に第一次オイルショックが起こりました。当時、東京芸術大学の教授だった奥村昭雄先生を中心に若手の建築家の集まりがあり、その際、建物のエネルギーのことも考えてみようということになったのです。それで、奥村先生が太陽光エネルギーの利用を提案し、さまざまな工夫を凝らして完成したのがOMソーラーでした。地球温暖化など環境問題から、現在は、太陽光エネルギーを利用することは当たり前になっていますが、当時はまだまだそんなことを考えている人は数少なく、非常に先見の明があったアイデアだったと言っていいと思います。ここで考えられた仕組みは、一口で言うならば、いわゆる空気集熱式のパッシブソーラーシステムのことです。パッシブソーラーシステムとは、太陽光エネルギーを利用して発電したりするアクティブソーラーに対して、建築的な方法や工夫によって太陽エネルギーを利用する手法を言い、その基本には、「熱や光を自然のまま利用し、しかも汚れを生まない」という、まさに自然の力をできる限り活かして、快適な住まいを造ろうという考えがあります。この仕組みの良さは、自然に親しみ働きかける楽しさや自分で工夫する面白さ、環境への負担を減らせる点だと言えます。しかし太陽光エネルギーは、確かに無限に存在し、また温暖化も生み出さないナチュラルなエネルギーですが、残念なことに” 広く薄い“エネルギーであり、夜はもちろん、曇りや雨の日もほとんど手に入れることができません。言い換えるなら”気まぐれなエネルギー“であり、そのコントロールが非常 に難しいエネルギーでもあるのです。それを上手くコントロールして利用しようというのがOMソーラーの考えの根本になりました。