石田 建一
2007年01月31日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2007年01月31日 |
石田 建一 |
エネルギー・環境 |
エネルギー・ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.79) |
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昔の家は寒かったし、暑かった
昭和三二年生まれの私が子供の頃に住んでいた家は、木造で断熱のない、すきま風がびゅうびゅう吹き込む住まいだった。ガスは料理に使う貴重なもので、現在のような暖房はなく、練炭の火鉢やこたつで暖を取っていた。朝は寒くて起きるのに一大決心が必要で、着替えるのも服が冷たいため、こたつに入れて暖めてから着ていた。お風呂も薪で、蛇口からお湯は出ないため、冷たい水でいやいや顔を洗うか、ヤカンでお湯を沸かして洗面器にぬるま湯を作るかしかなかった。冬になると母の手は荒れて痛々しかった記憶がある。 夏も昔は、都市のヒートアイランドや温暖化などがなかったから、外気温度は今より多少涼しかったかもしれないが、逆にクーラーなどないし、蚊が多く蚊帳を吊って寝る必要があり、ずいぶん寝苦しかったように思う。昭和三〇年の後半から石油ストーブが普及しはじめ、部屋全体を暖める暖房が一般的になった。しかし、断熱・気密性の悪い部屋で一定能力のストーブを焚き続けるのだからエネルギー消費も多く、足下はすきま風で寒く、上の方は暑い、「頭寒足熱」とは逆の不快な環境であった。しかし、その後、採暖から部屋全体を暖めるという方向への快適性の進歩は大きかった。お風呂もガス給湯器が一般的になり、蛇口をひねればお湯が出る生活になった。そのうちに我が家にもエアコンが設置され、夏も一応涼しくなった。しかし、断熱の良くない住宅の冷房は、寒いか暑いかのどちらかで、痩せている父はエアコンを嫌い、太っている母はエアコンをつけたがり、夏は些細な争いが絶えなかった。この生活が、家を建て替えるまで長く続いた。