池内 了
2007年01月31日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2007年01月31日 |
池内 了 |
エネルギー・環境 |
エネルギー・ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.79) |
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『図解 新エネルギーのすべて』
化学工学会SCE.Net編 工業調査会 二〇〇四年
私は、現代の文明を「地下資源文明」と呼んでいる。地下資源を徹底して利用することによって大量生産・大量消費の社会を産み出し、大量廃棄によって地球環境問題を引き起こしているからだ。それに対して自然エネルギーをはじめとした新しい形態のエネルギー利用が喧伝されて久しいが、まだその歩みは遅々としたものである。本書は「分散型」と呼ぶエネルギー開発の技術内容と現在の実績、今後展開するであろう未来技術をまとめたもので、エネルギー問題を考える人には必携の本である。まず、太陽・風力・地熱・海洋や河川などの自然エネルギー利用がある。それらは熱や動力として自然界に溢れているが、いかんせんエネルギー密度が小さく、それをどう克服するかが鍵となる。しかし多くは既に実用化されており、現在は、よりいっそう効率を上げる研究に集中している。続く、バイオマス(植物)と廃棄物利用については、さまざまな方式が競い合っている段階にあり、今後大いに進展してゆくであろう分野である。これまでは廃棄していた物質にも多量のエネルギーが含まれており、それを再利用しようというわけだ。しかし、物質の改変・改質を必要とするから投入したエネルギー以上を取り出せるかどうかが技術の未来を決めることになるだろう。続く章は、新たな化石燃料(メタンハイドレードやオイルシェール)、石炭の液化、燃料電池、コージェネレーション、クリーン自動車など、依然として地下資源に頼らざるを得ない二一世紀において、石油のみに依存せずにエネルギー危機を乗り切る技術の総括である。これまでのエネルギー利用形態がいかに単細胞的であったかがよくわかる。原始時代に戻ることが不可能であることを考えれば、やはり私たちは技術に未来を託さざるを得ない。環境との調和を図るという条件の下で、人類がエネルギー問題にどう挑戦しようとしているかを見るには好適である。