清水 英範
福原 宏幸
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2006年09月30日 |
清水 英範
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住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.78) |
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今日わが国では、社会的不安を象徴する現象として、ニート、引きこもりやホームレスの問題などが取り上げられている。他方、所得格差を中心とする経済的格差から、希望格差、教育格差といった社会的格差までを含む格差問題の是非についても、さまざまな論戦が展開され、さらには「勝ち組」「負け組」といった扇情的なフレーズとともに、社会的不安と格差を結びつける議論も活発に行われている。実際、昨年CELが行った「生活者意識調査」でも、生活者が社会や未来に漠とした不安を抱いているさまが読み取れる。
そこで、社会的不安と格差問題の実像に迫り、実社会の中で両者がどういう関係にあるのか、生活者の安全、安心を実現するための行政、NPO、企業の課題とは何かを明らかにするため、ホームレス問題や社会的排除の問題などに積極的に取り組んでいる大阪市立大学の福原宏幸教授にお話をうかがった。
増えるホームレス生活者
清水 まず、経済的格差に関する、先生のご認識をおうかがいしたいと思います。平成一八年版経済財政白書によりますと、わが国の所得格差は長期的に緩やかな拡大傾向を示していると報告されています。また一方で、国民の格差に対する意識については、各種世論調査の結果では、所得などの経済格差が拡大していると感じている人は、調査対象者の六割以上を占めているとも報告されています。実際私どもエネルギー・文化研究所が昨年実施した生活意識調査の結果でも、「一〇年前と比較して貧富の差が拡大した」と感じている方が、回答者の約四五パーセント、「今後一〇年間に貧富の差がいっそう拡大する」と考えている方が約五二パーセントいらっしゃいます。やはり生活者の間では、自身が当事者として所得変動を実感し、格差が拡大したと考えているかどうかはともかく、少なくとも格差拡大への不安感が広がっていることがうかがえるのではないでしょうか。
福原 経済財政白書がいうように、格差は緩やかだけど拡大していると思います。特に若者に関しては、若年非正規雇用者が増えて、それが若者間での格差を拡大させています。