土田 昭司
2006年09月30日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2006年09月30日 |
土田 昭司 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.78) |
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「不安」と「恐怖」は違う
今回、現在の日本社会における” 不安の 要因は格差なのか“と問われたのですが、結論を先に言うと、私は、厳密な意味では、それは違うと考えています。実際に、いくつかの世論調査などで、現在の生活に不安を覚える人が増えていることが示されているのは事実です。しかし、社会心理学研究を行っている者としては、厳密に言えば、「不安を覚えさせるような情報が流れているから不安を覚え、その理由に” 格差“が挙げられている」とも思われるのです。
まず、そもそも「不安」とは何なのかを考えてみましょう。「不安」は私たちの感情の一種ですが、「不安」は「恐怖」の下位概念であると考えられています。「不安」と「恐怖」は似てはいるのですが、大きな違いが一点あります。
「恐怖」は、自分の生命などが脅かされる明確な危険があることを知覚して、それまでの全ての活動を中止して、ひたすら逃げるという行動に向かわせる感情のことを言います。
一方、「不安」も逃げるという行動に向かわせる感情ではあるのですが、将来に対して” 漠然“と「自分が年をとったら、生活ができなくなっているのではないだろうか」というように、明確な危険があるかどうか分からないのに心配をする心理的な状態を言います。つまり、「不安」は「恐怖」とは異なって、” 明確な恐怖を生み出す対象物“があるかないかよく分からない状態において、恐怖の対象物が本当にあるのか調べようとしている時に生じる感情であると理解できます。