三浦 展
2006年09月30日作成年月日 |
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2006年09月30日 |
三浦 展 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.78) |
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「下流社会」という言葉が生み出したもの
現在の日本では、生活保護を受けている人が一三〇万人くらいいると言われていますが、その一方で、金融や資産を一億円持っている人も一三〇万人くらいいると言われています。僕が以前に書いた『下流社会』(光文社新書)という本は、決して経済的に恵まれない人々のことを書いたものではありませんが、本が売れることで格差論議が活発になったと感じています。
つまり、” 下流社会“という言い方が、一つの眼鏡のような役割を果たしたのではないでしょうか。ぼんやりとしか見えなかったものが、眼鏡をかけたらよく見えたということだと思います。
生涯賃金に大きな差が出る社会
日本の社会で個人の所得格差が広がっていることは、ジニ係数を見ても明らかです。
ジニ係数を見ても、格差はそれほど広がっていないと言う人がいますが、その場合、世帯単位の所得データを使っているからです。所得がなくて結婚できない、世帯を形成できない人は統計に入っていない。しかし、個人単位の所得を見ると、そうした人の所得格差はもっと大きいわけです。
たとえば、二〇年、三〇年前の三〇代前半の人たちと比べたときに、今の三〇代前半の人の所得格差は、かなり開いているでしょう。それは、正規雇用者と非正規雇用者の差が大きいからです。しかも今後、さらにその格差が拡大していくわけです。正規雇用者で出世コースを行く人は、今まで以上に早く出世できるようになります。一方、フリーターの給料は上がらない。ごく限られた人は、今後、正規雇用者になれるかもしれませんが、それでも給料格差が生まれてしまうでしょう。なぜなら、例えば、三〇歳で正規雇用者になったとしても、給料は入社三年目くらいの社員と同じ程度しかもらえないはずだからです。そしてその差は、何年勤めてもなかなか縮まらないはずです。