弘本 由香里
谷 直樹
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2006年06月25日 |
弘本 由香里
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住まい・生活 |
住生活 |
情報誌CEL (Vol.77) |
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対談
都市に住まう文化とこれからの行方
谷 直樹 Naoki Tani 大阪くらしの今昔館(大阪市立住まいのミュージアム)館長 大阪市立大学大学院教授
弘本 由香里 Yukari Hiromoto 大阪ガス エネルギー・文化研究所 客員研究員
近世・近代から現代に至る過程で、都市居住のあり方はどのように変容してきたのだろうか。大阪や京都など、歴史ある都市の住まいの変遷や、その生活文化をふりかえることで、「都市に住む」ことの本質的な意味が見えてくるかもしれない。
現代の都市居住を考えるときに、あるいは都市における新しい居住文化を創造していく際に、歴史に学ぶべきものとは何か。蓄積された生活の知恵を現代的にどう捉え直し、町に残された歴史的なストックを今後どう活用していくのか。「大阪くらしの今昔館」の谷直樹館長にお話をうかがった。
都市居住を歴史的にとらえる視点
弘本 先生のこれまでのお仕事をまとめられた著書『町に住まう知恵 』を拝見して、改めて実感したのですが、歴史学の分野にしろ、建築学や住居学の分野にしろ、この本で示されたような社会システムを含めて通史として連続的に「居住」を見る視点が、これまであまり重要視されていなかったのではないかと思います。また、先述した大阪くらしの今昔館(大阪市立住まいのミュージアム)の計画から運営まで一貫してリードしてこられたわけですが、現代の住宅政策にアクティブに働きかける機能として、まちの住まいの歴史を扱うミュージアムを位置付けるという視点は、他では見られない非常に画期的なものだと思います。まずはじめに、そういう視点を獲得されるようになった経緯からお尋ねしたいと思います。
谷 一九八九年に、『まちに住まう―大阪都市住宅史』という大部の本が大阪市から出ました。これは、私を含めた二十数人の専門家による共同研究をもとにしたものです。地方都市を対象とし、良好な居住環境をつくろうとするH O P E 計画の流れの中で、大阪に蓄積されている歴史や文化をきちんと発掘することを目的に、三年ほどかけて進めました。この底に流れていたテーマが「都市居住」なんです。その頃は、都市は、仕事をするなり、学ぶなり、生産するところであり、住むための環境は郊外が優れているというとらえ方が強く、「職住分離」が進んでいました。