小林 秀樹
2006年06月25日作成年月日 |
執筆者名 |
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2006年06月25日 |
小林 秀樹 |
住まい・生活 |
住生活 |
情報誌CEL (Vol.77) |
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時の話題 Commentary
住生活基本法の制定について
小林 秀樹 Written by Hideki Kobayashi
はじめに
住宅政策の基本を定める「住生活基本法」(検討時は住宅基本法)が二月六日に閣議決定され、今国会で六月二日に成立(施行は八日から)した。基本法とは、住宅に関わる憲法のようなもので、罰則規定はないものの、これからの政策遂行の基本理念を定める。住宅研究者の一人として本法律の意義を考えたみたい。
量から質への転換を示す住生活基本法
これまでの住宅政策では、一九六六年制定の「住宅建設計画法」が基本法の役割を果たしてきた。これは、国及び都道府県が新規住宅供給を進めるために、「住宅建設五ケ年計画」を策定することを定めたものだ。しかし、住宅不足が解消されるとともに建設重視が時代に合わなくなり、「量」から「質」への転換を踏まえた法体系が求められていた。
そこで、住宅建設計画法を廃止し、それに代わるものとして住宅基本法が検討されてきたわけである。最後の段階で、住宅というハードだけではないという認識から「住生活基本法」に名称を変えたが、妥当な判断だろう。
基本法の焦点―なぜ住宅に国が関わるのか―
今回の焦点の一つは、「そもそも住宅基本法が必要なのか」という点であった。不要派の代表的意見は、住宅不足が解消された今日、私的財産である住宅は市場に任せておけばよく、住宅に国が関与する必要は乏しいというものだ。
しかし、国民の住生活の安定確保や豊かさの実現は、依然として国の重要政策であるという必要派の意見が重視された。もちろん行政にとっては、自らの存在意義を左右し、経済界にとっては住宅減税はじめ景気浮揚策の目玉を左右するという思惑があったと思われるが、やはり、住宅がもつ社会性の理念が共有されたことが法律制定への大きな力となったようだ。その理念は、基本法の三条から六条に表現されている。