宗田 好史
2006年03月25日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2006年03月25日 |
宗田 好史 |
都市・コミュニティ |
地域活性化 |
情報誌CEL (Vol.76) |
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マスからオルタナティブへ、観光目的地としての都市
「マス・ツーリズム」は、近代工業社会の産物である。国民所得の向上と大量輸送機関の発達が観光を飛躍的に発展させた。団体で行けば安い。見知らぬ海外の町もリゾートも、夢に見た文化遺産の数々も、パッケージツアーがあるからこそ誰でもが行けるようになった。
このマス・ツーリズムに代わる観光の形を「オルタナティブ・ツーリズム」という。団体でなく個人や小さなグループで、パッケージ化された名所巡りでなく、自分で選んだ場所、団体観光客がいない場所を訪ねる旅である。自然環境や農村・農業、文化遺産など特別な目的を持つ旅、ボランティアや特定の伝統行事などへの参加・体験を目的とした旅でもある。ヒッピー、バックパッカーなど、マス・ツーリズムの裏側には、常にマスに迎合しない旅人がいた。現在では観光市場も成長から成熟期に移りつつあり、マスの成長が止まり、少数派だったオルタナティブに注目が集まってきた。こうして「観光」の形は常に変化し続けてきた。そもそも「旅」は、人類の誕生にまで遡ることができる根源的な人間の行為である。この旅には、狩猟・採集、略奪・侵略、通商・商用・ビジネス、親族訪問、巡礼など明確な目的と目的地があるものと、目的地が定まっていても「旅にでる」こと、あるいは旅を楽しむことが主眼になる場合がある。この中で、特に「他の国や都市・地域の風景・文化遺産・物産などを見て楽しもう」とする旅が「観光」と一般に定義される。つまり、観光目的地の多くは都市であった。通商にせよ巡礼にせよ、旅の多くは、常に都市を目的地としていたといっても過言ではない。