三木 浩一
2005年09月30日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2005年09月30日 |
三木 浩一 |
住まい・生活 |
消費生活 |
情報誌CEL (Vol.74) |
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時の話題 Commentary
消費者団体訴訟制度の創設
三木 浩一 Written by Koichi Miki
はじめに
消費者団体訴訟という新しい裁判制度を創設する法案が、二〇〇六年の通常国会に提出される予定である。消費者団体訴訟とは、一定の消費者団体が原告となって、消費者全体の利益を擁護するために、事業者の不等な行為の差し止めを請求する訴訟を提起することを認める制度である。
消費者団体訴訟制度の背景
消費者団体訴訟は、もともとヨーロッパで発達した制度であり、現在では、ドイツ、フランス、イギリス、オランダ、イタリア、スペイン、ギリシア、ベルギー、スウェーデンなど、EUに属するほとんどの国で採用されている。また、近年では、台湾、タイ、インド、フィリピン、インドネシア、スリランカなど、アジアの国々でも導入が進んでいる。なお、アメリカでは、消費者団体訴訟は導入されていないが、これと同様、またはより強力な機能を営む制度として「クラス・アクション」と呼ばれる制度が活用されている。
これらの国々で消費者団体訴訟という制度が創設されたのは、事業者の不当な行為から一般の消費者を救済するためには、これまでの訴訟制度では十分に対応ができないからである。なぜなら、このような制度がないとすると、訴訟の原告となって事業者の不正行為を糾弾できるのは、実際に被害を受けた個々の消費者だけであるが、消費者被害は訴訟の費用に比べて少額であることが多く、わざわざ訴訟を起こしても割に合わないし、時間や手間などの負担も大きい。