山内 直人
2005年06月30日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2005年06月30日 |
山内 直人 |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.73) |
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世界には、高い成長を続ける国・地域と、逆に長期の停滞から抜け出せない国・地域が存在し、相当額の国際援助を実施しても、なお、顕著な経済効果が見られないことが少なくない。国内に目を転じても、一九九〇年代以降、日本経済は全般的な停滞を続けてきたようにみえるが、実は地域間での成長格差は相当大きく、不況からいち早く脱して自律的な成長に成功した地域もあれば、様々な政策的てこ入れにも関わらず停滞を続ける地域もある。
こうした国際間、あるいは国内の経済パフォーマンスの地域差はなぜ生じるのか。成長した地域には何が備わっており、衰退した地域には何が欠けていたのか。 経済成長に関わる研究の蓄積は膨大であり、その要因は多岐に渡るが、一般的には、資本蓄積、労働供給の増加、人的資本蓄積による労働の質の向上、技術革新などが主要な要因と考えられ、実証分析においても、成長率をこうした要因に回帰することにより、成長の格差を説明しようとしてきた。
しかしながら、このような要因だけでは説明しきれない部分が残ることもつとに指摘されてきた。これは、「ソロー残差」と呼ばれるものであり、様々な解釈がありうるが、筆者は、地域コミュニティにおける信頼関係やネットワークの密度といった、いわゆるソーシャル・キャピタルの差によって説明できる部分が大きいのではないかと考えている。
本稿では、ソーシャル・キャピタルとは何か、ソーシャル・キャピタルはどのようなメカニズムで経済活動に影響を及ぼすのか、産業クラスターやNPO・地縁組織の活動はソーシャル・キャピタルの形成とどのように関わっているか、ソーシャル・キャピタルの蓄積を政策的にコントロールすることは可能か、といった論点について考えてみたい