東 一洋
2005年06月30日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2005年06月30日 |
東 一洋 |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.73) |
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
近未来の小説?
会社員Aさんは体調がすぐれず、その日会社を休んだ。気分転換にと、家の付近を散歩してみようとアパートを後にした。しばらくすると突然、近くの交番から走り出てきた警官がAさんを取り押さえた。「これ以上この道をこの方向に歩いてはいけません。この方向には幼稚園があります。あなたは幼稚園の半径一キロメートル以内には入ってはいけないことになっています」。Aさんは、わけがわからず警官に理由を尋ねると、こんな答えが返ってきた。「あなたはインターネットで、これまで幼児ポルノ動画を多数ダウンロードしていますね」。
近い将来、このようなことはないと言い切れるだろうか。またこのような社会が、私たちの望む安全・安心なまちの姿なのであろうか。
安全・安心への国民的希求
本年二月に発表された「社会意識に関する世論調査」によると、現在の日本の状況で悪い方向に向かっていると思われるのは「治安」が最も高く、昨年調査時から大きく上昇し、国民体感的な「安全神話の崩壊」を裏付ける結果となっている(図1)。 もちろんこの背景には、刑法犯認知件数が昭和期の約二倍で、同検挙率は昭和期の約三分の一であるという統計的現実よりも、国外での相次ぐテロや戦争、未成年による幼児をターゲットとした凶悪犯罪、学校への襲撃事件、住宅街での一家惨殺事件などが毎日のように報道され、「明日にでも自分や家族が被害者になってもおかしくないのだ」といった「不安感」が横臥してるのであろう。一方、週刊誌では、「東京犯罪多発『町・丁目』ランキング」といった特集が組まれ、「不安感」を身近に・具体的に感じるようになっているからである。