真名子 敦司
2005年06月30日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2005年06月30日 |
真名子 敦司 |
都市・コミュニティ |
都市居住 |
情報誌CEL (Vol.73) |
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高まるソーシャル・キャピタルへの関心
先進諸国の多くは、成熟化、高齢化、国際化、情報化といった共通の社会経済的なトレンドの中で、従来の政策や仕組みではうまく対応できない様々な歪みに直面している。
我が国も例外ではなく、行政と企業が果たしてきた役割を、市民が自発的・主体的に担っていかざるを得ない状況が各所に生まれている。内閣府の調査によると、ボランティア活動の活発な地域では、犯罪発生率や失業率が低く、出生率が高い傾向にあるという。近年、ボランティア活動をはじめとする市民活動の活発化は「ソーシャル・キャピタル」の培養を促し、それがコミュニティの安全・安心・安定につながるという見方が優勢になりつつあるようだ。
アメリカの政治学者ロバート・パットナムは、社会的なつながりとそこから生まれる信頼や規範をソーシャル・キャピタルと呼び、自国のソーシャル・キャピタルが減退しており、それがコミュニティ崩壊につながる可能性について警鐘を鳴らした。これが大きな契機となって、ソーシャル・キャピタルへの関心が世界的に高まっているという。
我が国では、二〇〇二年度に内閣府が、本誌の総論の執筆をお願いした大阪大学の山内直人教授を委員長とする調査委員会を設置して、ソーシャル・キャピタルと市民活動との関係について広範な調査を行った。今回は、その報告書などを参照しつつ、ソーシャル・キャピタルの輪郭に触れてみたい。