長田 吉洋
2005年03月15日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2005年03月15日 |
長田 吉洋 |
エネルギー・環境 |
エネルギー・ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.72) |
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炭火と炭火料理の魅力について
居間の火鉢に炭火を入れると必ず人が集ります。炭火には、人を本能的に引き付ける不思議な魅力があるようです。その空間ではたえず火の表情が気になり、火箸や灰ならしの取り合いになることもしばしば。
炭火を思うように扱うには、ある程度の経験と労力が必要ですし、危険をも伴うものですが、その不自由さが、経済優先、速さ優先主義に支配された現代人に大きなギャップを感じさせ、もの珍しさと心地よさをもたらすようです。炭火は赤く燃え上がり、やがて灰となり消えてしまいますが、着火から灰に至る過程で、木炭、火、空気、灰などが、実に複雑な変化をもたらします。ガスや石油の火のように決して安定することなく絶えず変化しつづけますから、そこに時間経過を感じることができ、不便さと同時に、逆に豊かな世界を織り成すことができるようです。
炭火のかたわらにいると、遠い時を感じたり、自然を感じたり、思い出にふけったり、何故か人生観のようなものをも感じることができます。流行の言葉で言うと「癒し」の効果でしょうか。これが炭火のもたらす最大の魅力です。そして、もう1つ、炭火は「灰」という面白い産物を残します。灰は耐火性、断熱性があり、形状を変えることで空気の流れに変化を与えるので、炭火の燃焼を自由にコントロールできるのです。また、灰ならしで山を作ったり、波の文様を描いたり、火鉢の中という小さな世界をより魅力的なものにしてくれます。最近では、この炭火の魅力に気付く人たちが増えて、火鉢や囲炉裏、七輪などが昔とはやや異なる形で使われることが多くなってきています。