畔柳 昭雄
2004年12月25日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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媒体(Vol.) |
備考 |
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2004年12月25日 |
畔柳 昭雄 |
都市・コミュニティ |
まちづくり |
情報誌CEL (Vol.71) |
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都市化と水環境
最近、「リバーライフ(川と歩む生活)」や「癒しの川」などと称される河川を中心とした身近な水辺と人々のかかわり方に関心が向けられ、水辺は自然との交歓場所やオープンスペースとして多様な利用がなされてきている。
こうした動向をいち早く捉えた論文が、一九七一年の土木学会で発表されている。「都市河川の機能について」(山本・石井)と題する論文である。この頃の日本では、河川環境は悪化の一途を辿り、海浜部では埋め立て造成が進み、水質汚染や公害問題が各地で顕在化していた。その結果、当時の「緑の国勢調査」(第一回自然環境保全基礎調査)では、国土の八割で開発が進み、自然は僅か二割にまで減少した、と指摘している。このような問題を通じて、本来、河川の有している「人間とのかかわり」に基づく社会的機能が改めて見直されることで、河川環境の再生が模索され始めた。そして、この論文では、河川機能を従来までの物理的機能に重点をおいた「流水機能」に対して、「社会的に存在すること自体の持つ機能」として「親水機能」を対置した。この親水の理念は、心理的満足やレクリエーション、エコロジー、景観など河川が元々備えていた機能を改めて捉え直そうとするものであった。
その後、七三年に東京都江戸川区で古川親水公園が開設され、親水概念が具象化されることになった。当初、河川機能として提起された「親水」の概念は、後に「水のある空間」全般に適用されるような広がりを見せ、各地で河川の暗渠化や運河、海浜の埋め立てに対する反対運動などにも連鎖し、水辺の保全にスポットライトが当てられるようになった。