前田 昭彦
2004年06月30日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2004年06月30日 |
前田 昭彦 |
都市・コミュニティ |
まちづくり |
情報誌CEL (Vol.69) |
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ストックが大事にされない国である。それを象徴的に示す一例を紹介しよう。写真1は古いが、なかなかおしゃれな住宅だとお感じにならないだろうか。大きな妻面が印象的で、上部にはゴチック風のゲーブルがついている。妻面の中央には、八角形の飾り窓と十字形の鉄格子が美しくデザインされている。二階の左右の隅角部は大きな張り出し窓が左右対称にとられているのが、少し建築に軽やかさを与え、モダニズムの息吹も感じる。道路側には、低いモルタル製の柵がもうけられているが、その上下でくびれた円筒形の縦材が愛らしく、前庭の緑と通りとの関係のアクセントとなっている。初期の土地区画整理事業により基盤もしっかりしている。建築は一九三〇年代に行われた民間開発だが、これはまぎれもなく質の高いストックといえるのではなかろうか。
私は学生時代に、大阪都心でコーポラティブ住宅を仕掛けてきた「都住創」の建築家中筋修さん(故人)から、この住宅群を教えられた。中筋さんもそのデザインの質の高さに注目していた。写真のタイプは、一棟に左右対称に二住戸が入っている「二戸一」タイプの住宅である。大きな妻面の真ん中に戸境壁が隠れていて、左右に一戸ずつ二階建ての住戸がある。
ここで、写真2を見ていただきたい。別の筋の同じタイプの二戸一住宅である。なにやら、住棟が半分に切られているようにも見える。