濱 惠介
宮本 佳明
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2004年06月30日 |
濱 惠介
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都市・コミュニティ |
まちづくり |
情報誌CEL (Vol.69) |
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対談
ストック再生に向かう建築・住宅と新たな視点
宮本 佳明 Katsuhiro Miyamoto 建築家、大阪芸術大学助教授
濱 惠介 Keisuke Hama 大阪ガス エネルギー・文化研究所 研究主幹
第二次世界大戦で敗戦国となった日本だが、戦後、急速に経済成長を遂げ、世界有数の経済大国にまで復興した。急激に経済が発達している時は、古いものを壊し、新しいものを作り出す、いわゆる『スクラップ&ビルド』が経済効果を高めるためには確かに有効であった。しかし、経済成長が滞り、さらには地球環境問題が世界的な課題になろうとしている現代においては、もはやかつてのような単純な理屈は通用しなくなってきている。さらに、行き過ぎた経済重視の風潮に反発し、『心の豊かさを求める』人も増えたことで、「本当は残すべきだったものまで、破壊してきたのではないか」、「心の潤いをもたらすような開発が必要ではないか」といった意見も聞かれるようになってきた。そうした流れの一つが、単純に古いものを壊すのではなく、既存のストックを有効活用するリノベーションやコンバージョンの広がりと言えよう。
今回は、かつて住宅都市公団という立場からまちづくりにかかわってきた、当エネルギー・文化研究所の濱惠介が、住宅からまちづくりまで手がける、建築家の宮本佳明氏を宝塚の事務所に訪ねた。
震災を機会に地形の大切さを知る
濱 宮本さんは一人の建築家として建築から街づくりに至る仕事をされ、私は都市計画から始め大きな公的組織で建築・住宅に関わってきました。世代も違い、別々のアプローチをしながらも『既存のストックを有効活用すべき』という同じ考え方に至ったという点から、今日はリノベーションやコンバージョンなど、建築再生の意味についてお話できればと思います。せっかく宝塚の事務所に伺っていますので、まずこの建物についてお尋ねします。ご出身は宝塚だそうですね。
宮本 はい、私は宝塚で生まれ育ちました。事務所として使っているこの建物が、実は生家だったのですが、「阪神・淡路大震災」で被災し、行政の判断では『全壊』と判定されました。
濱 外から見たところ、全壊したというほどの被害を受けたようには思えませんが。
宮本 この建物は戦前からある四軒長屋の西から二軒目でした。恐らく一〇〇年近くは経っているのではないかと思います。それでも自宅部分は、よく調べてみると大したダメージを受けている訳ではないことが分かりました。しかし、西側隣家の小屋組が崩壊してしまったので、建物全体として全壊と判定されたわけです。