松元 隆平
2004年06月30日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2004年06月30日 |
松元 隆平 |
都市・コミュニティ |
まちづくり |
情報誌CEL (Vol.69) |
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「ハウジングNPO」とは聞き慣れない言葉だと思われる読者が多いだろう。ハウジングNPOは字義どおり「住まいづくりを行う非営利民間活動団体」の謂いである。戦後からつい最近まで、住宅供給とは、公共団体・公団公社か民間営利企業によってなされるものというのがとおり相場であった日本では、非営利民間活動団体による住宅供給は概念としても現実としてもほとんどあり得なかった。
しかし、世界では事情が違う。ヨーロッパでもアメリカでもハウジングNPOは、住宅政策・住宅市場において大きな役割をはたしている。その活動は住宅などハードの事業だけにとどまらず、雇用・教育・医療・福祉などの地域コミュニティ再生のためのソフト事業を含み、都市の再生に大きな役割をはたしている。
本稿ではこのような世界(欧米)のハウジングNPOの活動について事例をあげて紹介するとともに、日本の萌芽的なハウジングNPOの活動についても触れ、NPOによる住まいづくり・住宅ストック再生が、都市再生に及ぼす効果と今後の可能性を展望する。
アメリカのハウジングNPOと都市再生
ニューヨークをはじめとするアメリカ大都市では、一九六〇年代以降、都心・インナーエリアにおける空洞化とスラム化・ブライト化(※1)が進み、住宅ストックの放棄とコミュニティの荒廃が進行した。このような中で、コミュニティの再生に取り組むアドボカシー組織(※2)が生まれ、それらを母体として非営利民間活動団体(ここでいう「ハウジングNPO」)であるコミュニティ・デベロップメント・コーポレーション(CDC)の活動が盛んになった(九〇年頃の調査では、全米で一八〇〇のCDCが年間二八〇〇〇戸の住宅を供給している)。
CDCの多くは、放棄され荒廃した住宅の修復・再建などによる低所得者・貧困者・ホームレス向けの住宅供給を活動の中心とするが、同時に、職業訓練、ビジネス開発、教育・福祉・医療プログラムなどコミュニティ再生・開発のためのさまざまな活動を行っている。