小浦 久子
2004年06月30日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2004年06月30日 |
小浦 久子 |
都市・コミュニティ |
まちづくり |
情報誌CEL (Vol.69) |
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コンバージョンって何?
最近、コンバージョンやリノベーションという言葉を、建築雑誌に限らずいろいろなところで見かけるようになってきた。町家再生や長屋再生も話題になっている。ある雑誌の「再生住宅に住む」という特集(二〇〇四年三月)では、都市における新しい居住空間の選択肢として、古いオフィスビルや倉庫の改修などを見せている。コンバージョンやリノベーションが「新築よりスタイルがある」という。つまり主張があって格好がいいのだ。特集を見ても、都市の文脈への関心は見えないが、新しい生活空間への期待は見える。
コンバージョンは、もともと建物の用途を転換して使うこと全般を意味している。パリのオルセー美術館も駅舎を美術館に転用しているということでは、コンバージョンの一つであり、ヨーロッパの歴史的都市であれば、古い建物を修復しながら、内部空間をオフィスや店舗、住宅に使い方を変えていくことは一般的である。
今、コンバージョンが話題になるのは、一つには都心で、今後、オフィス床需要の大きな伸びが期待できない状況があり、古いオフィスの空室率が高まっていること、都心に居住が戻りつつある傾向が見られることから、都市再生施策として古いビルのオフィスから住宅への転用が注目されていることがある。また、これまでのようなスクラップ・アンド・ビルドを繰り返す開発がもたらす環境への負荷が問題になっており、既存のストックを活かしていくことが求められてきているという社会的背景もある。
ここでは、大阪都心で既存のストックをうまく使いこなしながら、多様な仕事と住まいのための生活空間を生み出していくことをコンバージョンとし、ビル所有者にとってはスクラップ・アンド・ビルドに替わる選択肢となり、人口減少や産業構造が変化する中で、空間需要の減少や変化がもたらす都市の再編の過程における変化の時間をつないでいくしくみととらえてみたい。