松本 コウシ
2004年06月30日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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媒体(Vol.) |
備考 |
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2004年06月30日 |
松本 コウシ |
都市・コミュニティ |
地域活性化 |
情報誌CEL (Vol.69) |
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眠らない街へ、オレンジ色に染まる風景
夜になると街は光にあふれていました。写真にとって光はなくてはならないもの。煌々と輝く夜の光たちは、さながら昼間の太陽のように大切な存在となり、闇を照らします。そのためでしょうか、僕は光に対しては、いつも敏感になってしまう。10年以上、僕は、夜の光が醸し出す空想と現実との狭間の中で彷徨ってきました。人工的な光によって四方八方から照らされた夜の風景たちは、不思議きわまりなく、そして怪しげな何かを秘めています。ここ数年、夜の街の色が変わっていっているのに気づかれたでしょうか。夜を演出する光の主人公は水銀灯。この水銀灯が少しずつなくなっているのです。新しく街を彩っているのは、最近よく見かける派手な色をした光のナトリウム灯。トンネルによくあるあのオレンジ色の光です。なぜだか未来を感じさせるあの発色。今でもそうですが、子どもの頃、高速道路のトンネルに入ると、オレンジ色の光たちが矢のように背後に通り過ぎていき、まるでタイムマシンに乗って未来に向かっているような気分にさせてくれました。現在、近畿都市圏の幹線道路や街並みを照らす街路灯の半数以上はこのナトリウム灯に変えられているそうです(地域により差があります)。そして、今後、水銀灯のある場所でも、電球が消耗した時点でナトリウム灯に変えられていくようです。俳句や短歌にもよく詠まれてきた情緒的な静物、水銀灯。ぽつりと一本伸びている様は孤独や過去をイメージさせ、また雨上がりの草木に着いた水しぶきを冷たく照らすその光が、昼間の暖かいイメージの太陽と比較されて詩におりこまれることも…。