CEL
2004年06月30日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2004年06月30日 |
CEL |
住まい・生活 |
食生活 |
情報誌CEL (Vol.69) |
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モダンシティー大阪の欧風料理店『ガスビル食堂物語』を発行
大正時代から昭和の初期にかけて、日本の都市ではモダニズム文化が花開いた。その中で、大阪では市民の手による独自性豊かなモダニズムが発現した。昭和八年に誕生したガスビルも、その中心となった建物のひとつである。
大阪ガスの本社ビルとして、ガスビルでは当時最新のガス器具を展示し、ガスが開くモダンでハイカラな近代都市生活を広く一般に紹介した。その一方、開館以来、多彩な施設を市民に開放し、多くの人々が集まる文化センター的な役割も果たしてきた。例えば、演奏会や映画上映が盛んに行われたガスビル講演場、一度に一〇〇人が受講できた料理講習室、最新機器を備えた美容室に理髪場、そして洒落た喫茶室に本格欧風料理を供したガスビル食堂など。これらがひとつの建物に組み込まれたガスビルは、いわば「小さなモダンシティー」でもあった。
この本では、近代大阪の名建築に数えられるガスビルの誕生から現在までの流れを追い、その八階にあって多くの市民に親しまれたガスビル食堂のにぎわいを紹介している。
多数の写真・資料とともに、ガスビルやガスビル食堂に思い出を持つさまざまな人々のエッセイや対談、より広い視点からの研究者の論考などをつないでいく構成で、モダンシティー大阪を彩った芸術家たちの活動や西洋文化の香りを伝えた外国映画の世界、そして近代女性の姿やファッションの変遷などの内容も含む。
今から七〇年前、御堂筋や地下鉄とともに誕生したガスビルは現在もオフィスビルとして現役。この本の頁をめくっていくと、歴史的建造物の再生・活用といった今日的なテーマにも、自ずと思いが及んでいく。