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情報誌CEL

桜井 律郎

2004年06月30日

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2004年06月30日

桜井 律郎

住まい・生活

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情報誌CEL (Vol.69)

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 最近、自分(一九五〇年生まれ)の「世代」を強く意識することになる本を二冊読んだ。『ハイスクール一九六八』(四方田犬彦〈一九五三年生まれ〉著)と『「おたく」の精神史―一九八〇年代論』(大塚英志〈一九五八年生まれ〉著)である。

 前者は、著者の高校時代を中心とした思い出の記である。タイトルの「高校と西暦の組み合わせ」で、この時代に高校あるいは大学時代をおくった者には、一目で何を取り上げようとしているかがわかり、気持ちがざわつくだろう。それは、学園紛争(もっと当時の臨場感を出すために名詞を羅列するなら、「全共闘、バリケード、デモ、アジ・ビラ、学生集会での怒号、学校封鎖などが日常化していた学生時代」)の真っ直中で何を考え、どう生きたかということだ。

 当時の耳目を集めた事件をあげてみると、「一九六九年一月:全共闘が東京大学の安田講堂をバリケード封鎖、機動隊との“砦”の攻防戦が行われる。その年の東大入試は中止になった」。「一九七〇年一一月‥市谷の自衛隊駐屯地で三島由紀夫がクーデターを企て、失敗。三島由紀夫は割腹自殺した」。「一九七二年二月‥連合赤軍―あさま山荘事件が発生、連合赤軍内での凄惨なリンチ殺人が明るみにでた」などがある。とにかく、表面的には政治の季節であり、政治的には激動の時代であった。

 一方で、経済的には、戦後復興の象徴的イベントである東京オリンピック(一九六四年、同じ年に東海道新幹線も開通した)を経て、高度成長期(大阪万博‥一九七〇年)であり、大量生産、大量消費の中で、「大きいことはいいことだ」った。この大衆消費社会は、J・ボードリヤールによれば(「消費社会の神話と構造」、一九七〇年出版)、家電製品や車といった生産されたモノに限らず、社会現象の全て、ファッション、広告から芸術、文化、政治、思想など何でも消費対象商品としてしまうとのことであり、学園紛争もTVの中のニュース(ショウ)として消費されただけのように思える。いずれにせよ、学生の異議申し立ては、なんら政治的・制度的変更につながらず、この時代に学生であった者にとっては、却って虚無やシニシズムを抱え込むことになっただけだった。

 学園紛争華やかなりし頃に大学生であった全共闘世代とは団塊の世代であり、冒頭にあげた『「おたく」の精神史―一九八〇年代論』を読んで思うのだが、この大きな虚無を抱え込んだ世代の多く(世代名が示すとおり、母数もそもそも大きい)がメインルートから逸れて、自由業やサブの道、アンダーグラウンドに進み、文化面では、サブ・カルチャーの初代の担い手となったようである。彼らが、次の「おたく」世代の先輩として、目標となり、また「おたく」を育てた。

 今、「おたく」から「新人類」、「団塊ジュニア」を経て、「ポスト団塊ジュニア」(一九七五年〜一九八〇年代後半生まれ)の時代だという。日本で経済成長を体験していない最初の世代とのこと。どのような嗜好、性向を持ち、どのようなライフスタイルを築くのか興味あるところだ。  ――桜井律郎

 

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