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情報誌CEL

山下 満智子
奥村 彪生

2004年03月26日

【対談】「火」は食の幅を広げ、 コミュニケーションを生み出す装置でもある

作成年月日

執筆者名

研究領域

カテゴリー

媒体(Vol.)

備考

2004年03月26日

山下 満智子
奥村 彪生

エネルギー・環境
住まい・生活

エネルギー・ライフスタイル
食生活

情報誌CEL (Vol.68)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。

 遙かなる昔、「火」を手に入れた人類は、その「火」を利用して、さまざまな文化・文明を創ってきた。その中でも、現代に至る長寿社会を確立するきっかけにもなった『火の食文化』は、人に栄養を与えることで、単に肉体的な変化を生み出しただけでなく、例えば、「火」を中心に人が集まる作用が新たなコミュニケーションを確立させたり、「火」を管理するものが、その集団の中心となったりするなど、人の生活にさまざまな影響を与えてきた。

 今回は、食文化を通じて、そうした「火」が、人に対して果たしてきた重要な役割に

ついて、伝承料理研究家の奥村彪生氏にお話を伺った。

かつて家の実権は主婦が握っていた

山下 今日は、日本における「火」の文化について、料理をとおして話を伺おうと思って、奥村先生をお招きしました。

奥村 薪や柴を燃やして煮炊きをしていた頃、日本の農山漁村では、「火」は家の中心であり、火を絶やすことは、家を絶やすことでもありました。家の中で、囲炉裏の火を使って調理をする人が『主婦権』を持っていたのです。いわゆる『めしべら(しゃもじ)を持つ人』のことですが、その権利の大きさを証明するのが、囲炉裏端にある座席のうちで、水屋を背にして座る主婦の席です。

山下 『嬶座』とか『鍋座』とか言われたものですね。

奥村 当時は、主婦以外、食べ物には一切手を触れることができませんでした。家族が一年間に食べる食糧や調味料の調整とその管理、そして調理した料理の分配権の全てを握っていたわけです。家の生存は主婦の裁量にかかっていたのです。

 

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