関根 秀樹
2004年03月26日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2004年03月26日 |
関根 秀樹 |
エネルギー・環境 |
エネルギー・ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.68) |
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焚き火の魅力
道端や川原で火を焚いていると、なぜか人が寄ってくる。ひとこと二こと言葉を交わしては、手をあぶり、あるいは火のそばにしゃがみ込んで、遠い日を懐かしむようにじっと火を見つめる。
ゆらめき変幻する炎。かすかに甘い煙の匂い…。火には人の六感を満たしてさまざまなイメージを喚起し、時には妖しい幻覚をも呼び起こす不思議な作用がある。パチパチと木がはぜる音を聞いていると、やがて時間感覚も麻痺して、妙にゆったりとひそやかに安息したり、逆に言い知れぬ興奮を覚え、いつになく冗舌になったりもする。火は、人間のDNAに刻まれた根源的な記憶を呼び覚ます触媒であり、神々や祖霊の世界へといざなう最古のマルチメディアだ。
いま目の前で燃える火は、アフリカの谷で猿人や原人たちが見つめた火とも、五千年前に縄文人が見つめた火とも、基本的に変わることのない同じ火だ。同時に、今この瞬間に燃え盛る火は数秒前の火とも違うし、一瞬後の火ともまた違う。古代の神話・伝説や音楽の多くも、火のそばで生まれた。火は実に、人類文化の原点であった。
火を使えない学生たち
いま、大学生の多くは、ナイフで木や竹を満足に削れないし、マッチで火をつけられない者も増えている。焚き火でご飯を炊こうにも、かまどを組むことに思い至らず、不安定な焚き火の上に直接飯ごうや鍋を置こうとしたり、太い薪を割りもせず、そのまま百円ライターで点火しようとする学生もいる。「先生、火が着かないんですけど…」。焚きつけというものを知らないのだ。