弘本 由香里
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2003年12月25日 |
弘本 由香里
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都市・コミュニティ |
まちづくり |
情報誌CEL (Vol.67) |
優れた都市住宅として、他に類を見ないほど多様な発展を見せ、開発の波に洗われながら、現在もなお大阪の典型的な住まいとして、まちのあちこちに生き続けている大阪の長屋。近世に形成されたプランを受け継ぎながら、近代化による社会・生活の変革に対応し、文字通り都市住宅としてまちの活力を支えてきた歴史がある。
戦災によって、こうした長屋の多くが姿を消していった。しかし、かろうじて戦災を免れた地域に、今もなお多くの長屋が命をつないでいる。一見、戦後の都市開発から取り残されたかのように見えていた長屋街が、実は成熟社会における持続可能な都市の発展を支える仕組みや都市居住のモラルなど、学ぶべき要素をふんだんに宿した存在なのではないか、そんな気づきが生まれつつある。その価値を再発見し、活かそうとする動きがあちこちで見られる。
こうした現象を通して、現代の都市問題・住宅問題にアプローチし、それを解く鍵を見つけることができないか。そこに住み・暮らす主体の側から、都市づくりのシステムを組みなおしていく都市再生の核心を、長屋再生ムーブメントに読み取ることができないか。本連載はそんな思いからスタートしたものである。
第一話では、長屋をめぐる考察の導入として、大阪の長屋における歴史の連続性と多様性に焦点を当て、その特性を大まかに外観した。続く第二話では、今なお長屋で構成された街区の姿をふんだんに残す、空堀商店街界隈での長屋再生の動きを取材し、持続的・内発的都市再生の鍵を探った。
第三話の今回は、大阪市の玄関口・梅田のすぐ側に位置しながら、戦前からの長屋を中心にした暮らしの風景が息づく中崎町界隈の長屋と、そこにやってくるニューカマーたちの姿を追いながら、そのムーブメントが問いかけてくる声に耳を傾けてみたい。