豊田 尚吾
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研究領域 |
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2009年01月01日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
ライフスタイル |
CELレポート (Vol.36) |
大阪ガス エネルギー・文化研究所(以下、CEL)は、生活者の視点を重視し、長期的観点から日本、社会の課題を研究テーマに設定して、各種施策提言、実践することをミッションとしている。どのような社会を目指すかといった大きな方向性を展望する際の指針として、昨年2020年をひとつのベンチマークとし、CEL内で議論を行った。2020年には現時点で懸念されている課題を克服しており、望ましい可能性を広げている社会を想定し、その実現のために、今何をしなければならないかについて検討を行った。
拙稿もその一環として、筆者なりの問題意識を取りまとめた論考である。広く世界的視野で、かつ2020年よりは、もう少し長期の視点で、日本人が今後、何をなすべきかを考察することを通じて、自身のその強みを知り、それを生かす方策をまとめてみたい。
まず、結論から述べると、我々が世界に対してすべき貢献とは、「エネルギー・資源制約を克服する、成熟した人口減少社会の実現を通じて、維持可能な社会モデルを世界に示すこと」である。その際、私たちの強みとなるものは、?エネルギー・環境に関するハードウェアの技術、?よい意味で、心をだますバーチャル・リアリティのソフトウェア技術、?正義の理念と共通善を用いてコミュニティを運営する能力である。
克服すべき重要課題(課題認識)
長期的視点、グローバルな観点から世界、社会を展望した場合、最も大きな課題になりうるのはエネルギー・資源問題である。需要面からいえば、現在65億、あるいは将来人口100億人を従来の意味で物質的に豊かに維持するためには、膨大なエネルギーおよび資源が必要となる。因みに国民一人当たりのエネルギー利用量を確認すると、現在、米国は中国の約6倍となっている。将来、BRICsをはじめ、多くの国が従来型経済発展を遂げたときのエネルギー消費を考えると、少なくとも現在の技術水準では維持可能でないことはすぐに理解できる。