豊田 尚吾
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2008年11月12日 |
豊田 尚吾
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都市・コミュニティ |
地域活性化 |
CELレポート (Vol.35) |
倫理的イノベーションが日本社会を新たな成長と発展に導く。日本企業は大義の提示と
それに沿った経営戦略の実践を通じて、人材の活性化を図りイノベーションを誘発することができる。それはなぜか、またその具体的方法は何かについて以下、現状(課題)認識と
要点、解決の方向性、具体的処方箋の順に論じる。
あらかじめ結論を述べれば、?グローバル化などによる市場の失敗の克服、?維持可能
な社会保障制度の構築、?経済価値に偏らない多元的な価値の社会的承認、以上が実現すべき現状の課題と考える。その解決のために広義のイノベーションが必要であり、それは市場の失敗の補完、社会的基本財の生産性向上、個人の卓越に対する尊敬を通じて課題の解決に貢献する。これを拙稿では倫理的イノベーションと定義する。
その実現のために社会の各セクターはそれぞれの役割がある。その中でも企業は大義(コーズ)の提示とそれに即した、ブランド戦略等の実践を通じ、方向性とモチベーションを与えることで人材(人財)を活性化させイノベーションを実現する。同時に政府、生活者やコミュニティも自らの役割を認識し、実行に移すことで初めて真の倫理的イノベーションが実現可能になる。1.現状(課題)認識
まず、現状の課題認識とその要点について、市場の失敗、社会保障の危機、従来型豊かさの限界の3 点を述べる。第一に世界規模の市場の失敗である。世界はIT、金融テクノロジーといった、取引費用を小さくするイノベーションを通じて経済のグローバル化を推し進めてきた。これは一方で、世界中の経済財がボーダーレスな市場を通じて効率的に取引されることを可能にした。
しかし他方で、市場が効率的に機能するための条件が整備できないことからくる「市場の失敗」をもたらしている。環境問題の背景にある「外部不経済性」が代表例である。温室効果ガスの排出は市場のコストとして反映されないため抑制が効かず、これが地球温暖化の主要因と考える識者が多い。