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弘本 由香里

2008年11月10日

国境越える美酒の香り

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2008年11月10日

弘本 由香里

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産経新聞夕刊「感・彩・人コラム」

ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。

「弄花香満衣(花を弄べば香りは衣に満つ)」。意外と思われるかもしれないが、仏教・禅の世界などで大切にされている言葉だ。教えとは、自然に美しい花に触れて、その香りをまとうがごときもの、といった意味だと聞いた。

そんなかぐわしい言葉を、ふと思い出すような美酒に出会った。幻の天然韓酒ともいわれ、米・もち米・天然麹と水だけで醸造する。起源は約千年前の高麗王朝時代に遡り、韓国の無形文化財に指定されている伝統民俗酒である。

長く醸造が禁じられた時代を経て、途絶えかけていた醸造法は、韓国内の寺院や旧家で密かに温存されてきたのだという。その秘伝を訪ね、完全復刻に力を尽くしたのが、指月(チウォル)僧侶というご住職だという。

今年、大阪・生野コリアタウンにあるミニ博物館兼韓茶カフェ「流れる千年」で、その幻の復刻韓酒がデビューした。韓国の指月僧侶から醸造法を学んだ、在日コリアン三世の洪貞淑(ホン・ジョンスク)さんが、韓国に醸造所をつくって生産を始めたもので、「四香酒(サヒャンジュ)」と名づけられている。

東西南北、四方八方、美しい味と香りが広がるようにとの思いが込められている。国境を越え、時を越え、変わらぬ人の願いがあふれ、伝わってくる。

 

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