豊田 尚吾
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2008年07月04日 |
豊田 尚吾
|
住まい・生活 |
消費生活 |
CELレポート (Vol.34) |
はじめに
生活の安全・安心をどのように確保していくか。特に不審者が子供を傷つけたりコンビニに強盗に入ったりという報道が目に付き、地域の安全確保に対する不安は高まっている(表1)。犯罪も巧妙になる中、財政の制約もあり警察行政の対応には限界がある。従来型のコミュニティが崩れつつある多くの地域では、近隣住民とのコミュニケーションも少なく、日中地域を離れてしまう共働きでは、互恵的な見守りという行為も継続していくことは難しくなる。
そのような中、朝、地元の小中学校の通学時に地域のボランティアの人々が角々に立ち、児童や生徒の安全を確保している地域が増えてきた。
あるいは夜には自警団的な活動を行っているグループもある。前者はPTA以外にもリタイアした地元の高齢者が力を発揮し、後者の場合には比較的若手の面々や地元商店会の会員などが中心となっている。これらの行為は地域に対するコミットメント(積極的なかかわり合い)であり、自分自身の利益には直接つながらないという意味で利他的である。(筆者が日刊工業新聞で連載していた)倫理的消費と言う観点からは、寄付が金銭の支払いを伴うために消費と分類されるのとは異なり、上記ボランティア行為は労働を提供するだけのことが多く、消費行為には該当しない。しかし、寄付もボランティアも利他的な価値や公益的価値を得るために、金融資産や役務といった自分自身が持っている資源を提供するという意味では共通するものがある。“時間を消費する”との言い方がある。地域の安全確保という社会の共存と言う目的のために(お金の変わりに)時間と体力を消費すると考えて、これも倫理的消費の仲間に入れて考えることにしよう。以下では関連データの結果を検討しつつ、自警団的行為の意味を捉え、将来性を展望したい。