豊田 尚吾
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2008年03月27日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
消費生活 |
CELレポート (Vol.33) |
近年、環境・エネルギー問題が生活のいたるところに影響を及ぼしている。それらに対する処方箋として、家電リサイクル法など、制度で消費者の行動を変えようとする動きとともに、エコバッグの奨励など、生活者の意識に訴えて行動に変化を与えようとするものがある。後者は今までの個人主義的な消費者行動論から見ると、消費者にとっては直接自分の利益につながらないコストの負担であり、倫理的要素を持った消費行動として興味深い。それはどのような意味があり、今後どのように展開していくべきなのであろうか。
このことについて考えるためには、そもそも生活者の行動を促す誘引について、より基礎的な検討を加える必要があると考える。具体的には、生活者にとっての幸福や社会を成り立たせるための倫理についてである。雲をつかむような話になりがちであるものの、その重要性は万人が認めるところであろう。
1.倫理的消費の興味深さ
環境問題、エネルギー・資源問題、少子高齢化社会、グローバル化に伴う国際的な所得
均衡化と国内的な所得格差拡大、食糧問題・・・。経済学で言えば、これらは多かれ少なかれ、外部性、分配問題などの要因を含み、市場機能だけでは十分に解決できない課題である。
そのような問題に対しては、今まで公共経済学が理論的な処方箋を提供し、主に政府の役割を論じている。一方で、政府部門の肥大化と赤字体質が足かせとなり、現実的には政府部門だけに問題解決を担わせることはできなくなっている。そのため、最近では民間の公共ともいうべきNPO(非営利団体)の機能に対する期待が高まっている。同時に、環境負荷の小さい製品の購入や、エコバックの利用、カーボンオフセット旅行といった、消費者の意識に訴えることによって、消費行動に影響を与えようとする試みも行われている。
筆者は某大学の経済学部で非常勤講師を務めている。学生に環境やエネルギーに関するレポートを課した場合、よく目にするのが、「結局、私たち一人一人の自覚が必要であり、・・・私も今後、環境にやさしい生活を心がけたいと思う」といった認識と決意表明である。