弘本 由香里
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2007年11月10日 |
弘本 由香里
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都市・コミュニティ |
まちづくり |
WEB |
應典院寺町倶楽部のニューズレター『サリュ』vol.54 |
旧来型の地域や家族の規範に拠って命脈を保ってきた、伝統宗教の枠組みの中に位置しながら、個人化する社会の変化を敏感に自覚的に受け止め、個人化する社会にどうコミットすべきか、現代に生きる宗教施設や活動のあり方を模索してきた(している)のが、應典院という寺院だと説明しても、おそらく間違いではないだろうと思う。人生の完成期をサポートしようとする試みや、表現活動を通した個々人の尊厳の回復などは、象徴的な取り組みといえるだろう。その意味で、應典院再建10周年を迎えた今年、寺子屋トーク50回の節目に、「社会の個人化と個人の宗教化」を「スピリチュアリティ=新霊性文化」の概念によって論じる、島薗進氏(東京大学大学院人文社会系研究科教授)を講師に迎えられたということは、実に自然な流れとして受け止められた。
島薗氏が述べられているように、社会のグローバル化や個人化を引き金に、日本をはじめいわゆる先進国と呼ばれる国々で、個々の人生やアイデンティティのあり方と、社会規範や公共性のあり方、宗教あるいは宗教的なるものとの関係性は希薄化している。それらは、いったん個々のスピリチュアリティのあり方に還元されながらも、再度社会における集合的な心理や行動の多様な姿をとって現れ解釈されつつある。第50回寺子屋トークの背後には、そうした社会の大潮流をふまえ、應典院の諸活動が持つ現代的な意味を、伝統宗教を含む歴史的な視野の中で相対化して位置付け、今後への指針としていきたいという願いもあったのかもしれない。