濱 惠介
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研究領域 |
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備考 |
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2005年08月01日 |
濱 惠介
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エネルギー・環境 |
地球環境 |
新聞・雑誌・書籍 |
(社)日本建築協会機関誌「建築と社会」2005.8月号掲載 |
この書は建築と環境の関係を案内する一種のガイドブックである。従って、知りたいと思う部分だけを読むことも可能だが、私は全体を読み通し理解することに意味があると思う。その理由は後で述べる。
全体の構成は次のようになっている。まず建築と「環境」のかかわりが語られる。編著者の思想、特に地球環境と建築の関係が随所に感じられる。次に建築の「構成要素」(各部位)と環境の関係が述べられる。さらに視点を逆にして、光・音・空気・熱などの「環境要素」を基点にそれらの利用又はそれらから防御など建築としての対応が書かれている。建築から環境を、環境から建築を相互に見ることで要素間の関係性を解明するのに加えて、省エネルギー、環境共生、環境の管理、高齢者対応という今日的な課題を取り上げ、建築と環境の包括的な展開を論じている。そして最後には、いわゆる「建築原論」の基礎を集約的に掲載し、この書をしめくくっている。当然、巻末には索引が付される。柏原先生から書評を依頼され、この本を最初から最後まで注意深く読み通すことになり、図らずも大変勉強になった。これまでの自らの活動を振り返り、「本当にそのとおり」と同感したことが多かったし、「そこまで理解していなかった」と反省させられたことも少なからずあった。そして、もう少し早い時期(実務をこなしていた頃)に「もっとこの種の勉強をすべきだった」という思いが残った。第3章の環境要素以降は分野毎の識者によって執筆が分担されているが、その割には統一感があり、編者の力量が伺われる。写真が非常に多いことを大いに歓迎する。ひとつひとつの写真が小さいのは限られた紙幅の中に多くの事例を紹介するためやむを得ない。いや、むしろ実物を見たいと思わせるためには望ましいことかもしれない。略図も分かりやすく理解を助ける。風土を異にした海外の事例紹介が多く、環境が建築に与える影響と対応の姿を知る参考になる。また、回転ドアの事故など、最新の情報も含まれている。