弘本 由香里
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2005年07月06日 |
弘本 由香里
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都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
新聞・雑誌・書籍 |
八尾市民自治研究所ニュースレターvol.47 |
新たな公共の担い手のために
新たな時代を切り開く主体こそ真の「生活者」ではないかと、『「生活者」とはだれか』(1996年、中公新書)の中で天野正子さんは語っています。生活者とは、「生産現場から発信する「労働者」や、消費の場から発信する「消費者」に対置され、その両方を含む全体としての生活の場から発想し、問題解決をはかろうとする人々」(天野)であり、その際のキーワードこそ、「個人・協働・オールタナティブ・地域」であると。
八尾市の第4次総合計画「やお未来・元気プラン21」が策定(2001年3月)された、2000年前後は、日本社会のパラダイムシフトを予感させる法・制度が次々と繰り出された時期でした。新たな公共の担い手の登場を後押しする、NPO法(特定非営利活動推進法)の施行や、介護保険制度の発足などはその典型です。今や生活の中に浸透してきたこれらの仕組みが、成果・問題点ともに評価される時期に来ています。その過程の中で、改めて確認できることのひとつは、社会のパラダイムシフトとは、生活やまちづくりの担い手自身の主体的な変化と成熟なしにあり得ないということではないでしょうか。
こうして振りかえってみると、既存の社会システムの限界を乗り越えて、オールタナティブな公共の枠組みを築いていくには、個の成熟を出発点とし、個の成熟を支えていくこと。そのためには、地域内・地域間の新たな個と個の関係づくりの仕組みや仕掛けが不可欠であることに気付かされるのです。
事実、この5年〜10年は、オールタナティブな公共の枠組みを指向する個々の取り組みが、言説の段階から実践の段階へ。誰かがどこかでやっているという話から、自分の身近なところあるいはまさに自分自身がやっているという実生活レベルの経験へ。試行錯誤をともないながら着実に積み重ねられ広がってきた年月だったといえるのではないでしょうか。