豊田 尚吾
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研究領域 |
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2005年03月01日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
消費生活 |
新聞・雑誌・書籍 |
(財)統計情報研究開発センター「ESTRELA」2005年3月(No.132)所収 |
1. はじめに
(独)国民生活センターが生活向上に資する調査研究を行う機関であることはご承知のとおりである。同センターが昨年12月に発表した「消費生活相談にみる2004年の10大項目」を見ると、「消費者基本法が成立」、「個人情報に関する相談が増加」など、メディアでもよく取り上げられた重要事項とともに、「架空請求の相談が急増」、「消費生活相談件数が6割増」といった事項もランクインしていた。確かにオレオレ詐欺改め振り込め詐欺など、新手の詐欺被害に関する話題をよく耳にした(その他の項目に関心のある方は国民生活センターのホームページを参照いただきたい。http://www.kokusen.go.jp/ncac_index.html)。実は筆者宅にも昨年、振り込め詐欺らしき電話があった。幸い先方が示した状況に、かなりの無理があったこともあり未遂に終わったものの、非常にもっともらしい言い回しだったとのことである。マーケティングにおいても社会心理学的な知見を基にした販売テクニックなどがあり、場合によっては詐欺と紙一重ではないかと思わされるものもある。このように人の心を巧みに操ろうとする挑戦者に対して、生活者は意識的に防衛体制を整える必要がある。そしてそれは今後益々必要性を増していくことであろう。それは生活リスクとして認識される。今回そのこと自体については、立ち入った検討を行わない。しかし、少なくとも各人の意思決定や判断がどのようなメカニズムに基づいて行われているのかを知ろうとする努力は必要である。それは結局、こころの働きを知ろうとすることにほかならない。無理難題に違いはないが、全く手も足も出ないわけではない。以下に論ずる内容は、人間理解に対する非常に興味深い試みであると筆者は考える。本連載前号(第7回 枝葉の中に見えるもの)では、自分の関心のある事項について決定木分析を用い、そこに何があるのかを「探る」方法について論じた。今回は逆に、生活運営の中で得られた自分なりの考えや発想をモデル化し、それを確認する方法について述べようとする。それはすなわち、こころの構造を理解しようとする努力である。