豊田 尚吾
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2004年10月01日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
消費生活 |
新聞・雑誌・書籍 |
(財)統計情報研究開発センター「ESTRELA」2004年10月(No.127)所収 |
お金で買えない価値がある─プライスレス。こんな心温まるCMが、カード会社のものであることに違和感を感じることはないだろうか。今回はこのような価値の評価に関して論じるつもりである。しかし、まずは身近なお金の話題から入ることにしよう。最高裁の調べによれば、昨年の個人の自己破産申し立ては24万件に上った。また、警察庁の統計によると、平成15年の自殺者は34,427人(前年比7.1%増)。うち経済・生活問題が原因であるのは3,654人(前年比10.8%増。ただし、数値は遺書があり、原因が特定できる人数。遺書なしも含めると8,897人、前年比12.1%増)である。極端な例ではあるものの、少なからぬ人々が経済・生活問題に悩み苦しんでいることを示す数字である。この例は、生活も広い意味での経営であること、そしてそれが破綻する可能性と、破綻した場合の怖さを教えてくれる。では生活経営の破綻を回避し、より望ましいものにするためには何が必要か。ひとつの方法は、生活の設計図を作ることである。設計図に則って行動することで、目標達成の可能性を増やしたり、リスクを減らしたりできる。長年、人間はそのための技法を編み出し、知恵を蓄積してきた。そこで今回は、生活の設計図作りに関し、パーソナル・ファイナンス(家計財務論)という切り口で考察を行う。その内容は以下のとおりである。第2節では、生活設計論に関する最近の動きを見る。第3節では、パーソナル・ファイナンスにおける生活設計のための技法について、その基本的考え方を概観する。第4節では、生活設計という切り口で考えたときの、その技法の問題点と対策の方向性について検討する。本稿は、各技法の財務管理以外の分野への拡張に取り組むことに論点を絞り込むことにする。第5節では、それら問題点への処方箋のひとつとして、各家計が金銭とは異なる複数の評価尺度を持ち、具体的に数値化してみることを提案する。