豊田 尚吾
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2004年07月30日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
消費生活 |
CELレポート (Vol.22) |
生活経営各論とは
生活経営各論では、最近話題となっている事項に関し、生活者の観点、生活経営の視点から論考する。問題に対して本格的な検討・検証を行うというよりは、それに向けての問題意識の明確化を目的とする。即ち、論点の顕在化や切り口の模索などを主な内容とし、将来研究を行う上での種を見つけることが本稿の趣旨である。(結果として、議論が厳密なものではなく、随筆風になることもあるかと思うが御容赦願いたい。)今回は、雇用に関する書籍「虚妄の成果主義」をもとに、生活と労働に関して考察を行うこととしたい。
雇用環境の変化を考える〜「虚妄の成果主義」をヒントに〜
はじめに
生活者にとって、雇用・労働は生活を営むための原資(金銭)を獲得するための主な手段であり、重大な関心事である。昨今、後述のように雇用環境の変化に関する議論が様々に行われている。その中でも「虚妄の成果主義」(高橋信夫著 2003・日経BP社)は話題となり、これに触発されたのか、その後、メディアもいろいろな切り口で取り上げている。本研究ノートではその様子を概観するとともに、筆者なりの考えを最後に提示する。
本稿での問題意識は、虚妄の成果主義が問題提起している、「人が働く理由を知っていますか?」に重なる部分が多い。すなわち、生活者として、働くと言うことは、上述のような生活のための原資を得るという目的と同時に、生活の目的そのものでもあるだろうという視点である。一生の中でかなりの時間を過ごす職場において、生活者としての満足感がない人生は、生活経営上「よい生活」とは言えないのではないか。昨今の成果主義に代表される雇用環境の変化はいかに評価すべきであるか。さらに、生活経営上、被雇用者としての生活者は、それに対していかに対処すべきなのか。以上が問題意識の所在である。
そのような考えのもと、本稿の考察内容は、以下の通りである。まず、成果主義に関して、問題提起を行った「虚妄の成果主義」の内容について簡単に紹介する。次に、それに関連する論調や、世間での捉えられ方について概観する。最後に筆者なりの切り口を明確にし、現時点での考え方について論じる。