豊田 尚吾
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
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2004年04月01日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
消費生活 |
学会論文 |
学習院大学「経済論集」41巻1号(通巻122号)/2004年4月(p17-32)所収 |
本稿は,生活者がリスクを伴う財の選択に際して,どのような判断を行っているのかについて考察を行う。具体的には,豊田(2003),豊田(2004)をもとに,生活者の意思決定に影響するであろう構成概念を仮説として提示し,それを検証するために新たなデータを用いて分析を行った。リスクを伴う財を評価する場合には,期待効用を算出し,それらを比較することで最終的な意思決定を導くという考え方が一般的である。しかし,生活者はしばしば期待効用仮説から逸脱する行動を取ることがあり,その記述的な分析がプロスペクト理論などによって試みられている。豊田(2003)では,生活者の意思決定の構造を検証するためのアンケート調査を行い,度数集計をもとに確実性志向,確率分布,ギャンブル志向,初期コストバイアス,認知錯誤という5 つの要因が影響しているのではないかとの問題認識を得た。豊田(2004)では,同じデータの個票に注目し,設問に関する等質性分析を行った。その結果,リスクに対する経済合理性と,熟慮なきギャンブル志向という2 つの要因によって回答を構造化し,それに基づいて回答者を4 つのグループに分類した。本稿では,以上の経緯を踏まえ,生活者が意思決定する場合に,様々な要因が影響しているとの問題意識のもと,その構造を理解することを目的としている。第1 節では,消費者情報処理理論に基づき,意思決定に関係すると思われる構成概念を仮説として提示する。第2 節では,その仮説を検証するために行ったデータ収集について論ずる。そして,第3 節では,共分散構造分析を用いて第1 節で提示した仮説の妥当性を検証し,考察を行う。結論を要約すれば以下のようになる。統計的にはある程度の説明力を持つモデルが得られ,複数の構成概念が意思決定に影響しているという問題意識に関しては,一定の結果が得られた。一方,その構成概念がいかなるものであるかについては,十分説得的なモデルを構築することができず,今後の課題として残った。