弘本 由香里
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2003年06月30日 |
弘本 由香里
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住まい・生活 |
住生活 |
新聞・雑誌・書籍 |
大阪府立女性総合センター『DAWN』2003年夏号 |
「人生の第三期をあなたはどんなふうに生きますか?」デンマークで、そんな問いかけからスタートする住まいづくりに出会った。市民自身が積極的に人生の第三期の舞台づくりに取り組む、シニア・コ・ハウジング(高齢者の協同住宅)プロジェクト。社会教育と、住宅政策・福祉政策が連動して、個々の人生の主体的な選択や表現をサポートしていくシステムである。
これまでの人生を振り返り、これからの生き方を考える、その舞台としての住まいを協同でつくりあげていく。市民主導のプランが、行政やNPOや専門家のバックアップで、現実のものになっていく。なんとクリエイティブなライフイベントだろう。
主役は、高齢の単身者か夫婦世帯。十から二十程度の独立した住戸がつながる、比較的小規模のテラスハウス型の集合住宅が多い。生活をエンジョイすることに、一番の重点が置かれている。世帯間で家事の分担まではしない、お互いにちょっと声を掛け合う程度の気持ちの支え合いで十分というスタイル。中心にハートと呼ばれる共有空間・設備を持ち、木工や織物やダンスやティーパーティなど、住み合う面々のライフスタイルに合わせて、ハートの中味もバラエティに富む。
なによりも目をみはるのが、一つ一つの住戸のインテリア。ドアを開くごとに思わず歓声をあげてしまうほど、住まい手の個性が溢れるばかりである。自慢のコレクションが並ぶリビング、自分の世界に没頭する屋根裏のアトリエや書斎、吟味されたアート&ファニチュアなどなど。住まうという営みが、その人の内面を豊かに耕し、コミュニケーションを誘発する、人生の表現手段そのものとなっている。