豊田 尚吾
作成年月日 |
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研究領域 |
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2003年06月30日 |
豊田 尚吾
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都市・コミュニティ |
都市システム・構造 |
情報誌CEL (Vol.65) |
かつての狂牛病騒動は、牛肉およびその関連製品の消費に直接影響したが、特にその心理的な効果が大きかった。中国を中心に猛威をふるっているSARSは、旅行業などのサービス業に影響を与え、狂牛病と同様に、心理的インパクトが大きいと見られている。SARSが、日本にも広がると、消費を相当抑制させる働きをするだろう。このように都市に住む生活者は、社会の外部環境から無縁でいることはできない。様々な社会問題から自分たちの生活を守るという点に関してリスクを負っている。「都市」問題を考察する場合には、様々な切り口があるが、本稿では、都市での生活をいかに向上させるかという視点で、このような外部社会との共存関係がもたらす生活者の自律性喪失と、そのリスクヘッジという問題に焦点を当てて考察してみたい。
本稿での主張を簡単にまとめると、以下のようになる。
都市居住者の生活は個別化と社会化に直面している。同様に都市に基盤を持つ供給者としての企業は、そのブランド化と社会化という課題を負っている。両者のニーズをマッチングさせることで、社会のリスクを低減させる可能性がある。それは次世代の社会のあり方を模索する上で重要な示唆を与える。
生活の個別化と社会化
都市に住む生活者は、利便性などという形で都市生活から様々な便益を享受するとともにコストも支払っている。伝統的社会では、家族が生産・消費の基礎単位であり、生活は周辺の血縁、地縁である程度完結していた。しかし産業革命後、分業による生産性の上昇とともに、その構造が変化してきた。都市生活はその結果の一つの現れであるということもできる。その構造変化を簡単にまとめれば、生活の「個別化」、「社会化」と表現できる。