弘本 由香里
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2002年03月08日 |
弘本 由香里
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住まい・生活 |
その他 |
新聞・雑誌・書籍 |
「A R C H I − S P A C E2 0 0 2 建築1 0 0 人× 1 00 冊展」。自分と建築の関係をテーマに、一冊のオリジナルな本をつくる。建築家でもアーチストでも学生でも誰でも、有名無名を問わず参加できる。そんな展覧会が、建築とアートを結ぶ大阪のギャラリー「A D & A ギャラリー」で、開催された。
本と建築、一見次元を異にする世界のように思うけれど、意外に共通点がある。まず、どちらも、近代にテクノロジーの洗礼を受けて、近代型の風景と近代型のコミュニケーションを社会に刷り込んでいった、確信犯的メディア( 媒体) だということ。
一方で、この確信犯的なメディアは、ページを「めくる」とか建物に「入る」といった動作を強いるという面では、生の身体と切っても切れない、ひどく原始的な性格を内側に宿したメディアでもあるということ。
この近代と原始、二つの性格の間を揺れ動くところに、本と建築の宿命的な面白さがあると思う。「建築1 0 0 人×1 0 0 冊展」には、そんな揺らぎや、隙間や亀裂が意図せず漂い溢れ出していて、実に味わい深かった。 ある者は、街角にちゃぶ台を置いて、お茶をすするゲリラ的なパフォーマンスをドキュメント仕立ての一冊に。ある者は、屋根裏に居場所を見つけるエピソードを絵本に。ある者は、伝統建築のスケッチの山を。あるものは設計の一部始終を… 。といった具合である。
それにしても、改めて驚くのは個々の冊子づくりを支えるパソコンの威力である。マスプロダクションから、再び個人のハンドメイドへ、技術が表現の流れを変えていく。本を開きながらそんな風にふかれた。