栗本 智代
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2002年02月06日 |
栗本 智代
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都市・コミュニティ |
地域活性化 |
新聞・雑誌・書籍 |
真っ白なもこもこの手袋、てっぺんにぼんぼりのついた帽子、花柄のワンピース…。幼い頃、母は私のためによく編み物や洋裁をしてくれた。
「ママ、智代も新しい手袋ほしい」。すぐに手にしもやけをつくる私に、母は、太い毛糸を使って手袋を編み始めた。しかし、毎日動く編棒の先からできてくるものが、どうもイメージと違う。“5本指の形で動物がついてるのがいいのになあ”。友達が得意げにはめていた市販品に憧れつつ、言い出せなかったっけ。完成したのは、白一色で分厚く親指だけ離れた形のもの。はめると手が不格好に大きく見えたが、とてもあたたかかった。
そんな私も女の子を出産した。しばらくして母が持ってきたのは、私が乳児の頃に身につけていた衣類だった。自作の手編みカーデガン、オーバーやあひるの絵がついた布おしめもある。押し入れの奥から引っ張り出してきたらしい。多少色あせたものもあったが、子供は文句を言わないし時々着せていると「あら、その赤いコートかわいいね」と保育所でほめられて「うふふ」と思ってしまった。この世に1つしかない服だもの。
しゃれた既成服を店頭で選ぶのも、それをわが娘に着せてみるのも楽しい。今はモノが豊富で、便利でラクチンな方に当然のように身をゆだねてしまうが、その分、母が私に与えてくれたようなぬくもりをどんな形で子供に伝えてやれるか、手探りを始めたところである。