栗本 智代
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2002年01月29日 |
栗本 智代
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都市・コミュニティ |
地域活性化 |
新聞・雑誌・書籍 |
大阪の「道頓堀浪花座」が閉館する。道頓堀は17世紀頃から芝居まちとして栄えた。中でも浪花座はもともと道頓堀五座の一つで「大西の芝居」と呼ばれ、上方歌舞伎の拠点でもあった。同じく古格で破風や桟敷を残していた中座が二年前に閉館したが、賑わいの歴史を刻んできたこれらの文化遺産を保存活用する手だてはなかったのか、非常に悔しい。
“江戸期の芝居小屋には役者と観客が一つになれる不思議な力が宿っている”と、金毘羅の金丸座を見学して感じた。金丸座は「大西の芝居」小屋をそのまま真似て建てられている。そんな昔ながらの場で歌舞伎を体験したいとずっと願っていたのだが、昨秋、東京で実現した。
“江戸時代の小屋掛け芝居を再現したい”という中村勘九郎による「平成中村座」で「義経千本桜」を観る機会に恵まれた。ここでは役者さんの眼差しや感情がそのままびんびん伝わってくる。勘九郎演じる“狐忠信”の親を思う心、その喜怒哀楽に小屋全体が熱くなり、隣の人も目にハンカチを当てていた。こんな贅沢な体験が、江戸期には頻繁にできて今日あまりできないのは納得がいかない。
今年大阪では「水の都」再生に向けて本格的な取り組みが始まる。整備された道頓堀川沿いでも新たに開削した掘割沿いでもいい、常設が厳しければ仮設でも面白い。ぬくもりのある芝居小屋が建ち並ぶ“水辺の劇場街”が、時代を経てリ・プロデユースされる日を夢みている。