栗本 智代
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2002年01月21日 |
栗本 智代
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都市・コミュニティ |
地域活性化 |
新聞・雑誌・書籍 |
マンション内で自転車置き場の位置替えがあった。予告はあったものの管理会社の一方的な決定指示に納得がいかず、しばらく落ち着かなかった。
というのも、私はウイークデイは毎日朝夕2歳になった子供の保育所送迎に自転車を活用している。これまでの場所は壁際で安心感があり、出入り口との関係で車体を極度に回転させるコツもやっとつかめたところだった。育児と仕事の両立のリズムをつかむまでの必死の思いがそこにしみこんでいる。「いやだ、変わりたくない。さみしいよ…」。たかが自転車1台分のスペースにそこまでこだわりを持ってしまう自分自身に驚いた。
自転車置き場でこんなに心が揺れるのだから、住まいやまちについて、移動を強制されたりひどく破壊されたらどれほどのショックだろうと、ふと阪神大震災で被災した友人を思い出した。家族の命はとりとめたが家は全壊し「大切なものが瓦礫になり、育ったまちも廃虚同然。もとの日常生活だけでなく自分を取り戻すまで時間がかかりそう」と、ふだんは健気な彼女が力なく瞳を潤ませていた。
復興の中ご近所どうしで、六甲山の緑や小さな川のせせらぎ、阪神間の生活文化が話題にのぼり、励まされたという。私達は日々の営みや人生の物語を場所やまちとの関係の中で紡いでいる。様々な出来事の中で、元気を失わず”私の物語”を歩き続けるため、支えとなる地域のあり様についても改めて考えたくなった。