弘本 由香里
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
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2002年01月04日 |
弘本 由香里
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都市・コミュニティ |
まちづくり |
新聞・雑誌・書籍 |
建設通信新聞関西支社2002年新春企画 |
二〇〇二年に向けて、温故創新の話題をひとつ。昨年四月、大阪市立住まいのミュージアムがオープンした。江戸時代の大坂の町並みの一部を、原寸大で細部にまでとことんこだわって再現している。驚くのは、当時の町が町並みの統一や建築・不動産取り引きの規制、町内の共用施設や生活の管理にしろ、町人( 家持ち) の自治で見事に運営されていたということである。
町の住人たちは、裏長屋( 借家) に暮らしながらの商売から、いつか表通りに面した表長屋( 借家) での商売へ、大成すれば大店になることも夢ではない。もちろんその逆もあれば、敗者復活もあっただろう。
個々の生き方のモチベーション( 動機) を誘発し、町の賑いにつなぐ、極めてしなやかな都市居住の仕組みが存在していた。それが、近世大坂の活力を支えていたといってもいいだろう。
現代に目を転じると、これまで各地で取り組まれた多くの新規開発や再開発が、大金を投じれば投じるほど、結果的に、そこに生きる人々のモチベーションを削いでいった事実は否めない。当然ながら町も生気を失っていった。
今周囲に目をやれば、地下の下落と不良債権処理を引き金に、有り余るほどのマンション供給が進んでいる。また、財政難で多くの公共事業が先送りあるいは見直される状況がある。そんな今こそ、不動産ディベロップメントから、モチベーション・ディベロップメントへ、開発の手法を転換する好機ではないか。