安達 純
2001年11月01日作成年月日 |
執筆者名 |
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2001年11月01日 |
安達 純 |
住まい・生活 |
その他 |
新聞・雑誌・書籍 |
月刊誌「エネルギー・フォーラム」への寄稿 |
これからの時代をどうとらえたらよいか、その中で個人は、そして企業、政府はどんな行動をとるべきかなど、誰でも知りたいが答えるには大変難しい問題について、著者達は経験に基づきながら、しかも常識にとらわれない独自の見解を惜しみなく披瀝している。多くの著作を著したドラッカーの思想のエッセンスをつかむための恰好の入門書であり、中内氏の経営哲学を知る上で貴重な資料である。
重点は個人と企業の創生にあるとドラッカー自身が述べているとおり、この本は「個人の創生」から始まっている。しかしむしろ、「社会の創生」や「政府の創生」から読んだ方がわかりやすい。私の関心に引き寄せて、ドラッカーの主張を要約してみる。
市場経済は、社会や経済が機能するための必要条件ではあっても十分条件ではない。それに、もともと社会は市場経済よりも大きいのであって、市場経済にはできないことがある。そこで政府による何らかの関与が必要になるが、政府には得意なこととそうでないことがある。従って関与の妥当性は、個別具体的に検証されるべきである。では、企業は社会的な問題にどう貢献できるか。戦後の日本社会においてパパママ・ストアは救命ネットであった。それをフランチャイズ化することにより、社会的な問題をビジネス上の機会に変えることに成功した。しかし、この事例のように常に社会的ニーズと経済的ニーズが調和するとは限らない。そこにNPOのような社会セクターの存在理由がある。メンバーへの動機づけや組識のマネジメントなど、企業と社会セクターは互いに学び合うべきことが多い。社会の創生のために今もっとも必要なのは、人と人の絆という意味のコミュニティの再構築である。その点、企業コミュニティを大切にしてきた日本の企業が、新しい状況の中でどのような道を切り拓くか真価が問われている。