豊田 尚吾
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2001年07月30日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
消費生活 |
WEB |
関西学院大学「メディア論」レポート |
テレビが生まれた1950 年代、日本は海外の先進国と比較して貧しく、消費者の生活水準向上に対する意欲は高かった。そのような中、テレビが提供する広告という情報は、国民の消費欲求を確実に喚起し、所得の向上とともに景気の好循環を下支えした。そこでは、広告をいかに効果的に提供すれば、消費がどの様に高まるかを議論できた。その意味では、広告と消費は他と切り離して独立に議論することができるという意味で、単純な構図を持っていたと言えるかもしれない。
経済が成熟化し、メディアに関する様々な技術革新が起こるとともに、広告と消費の関係は単純な構図でとらえることができなくなった。企業はより戦略的な経営にシフトし、顧客の商品選択の方法も複雑になった。メディアも多様化、デジタル化、双方向化(ネットワーク化)し、結果として、広告と消費は他と切り離して考えることができなくなったのである。本レポートは、そのような問題意識から、広告と消費を取り巻く環境変化が、両者の関係をどの様に変え、今後どの様に発展していくかを展望するとともに、マス広告の役割変化の意味を検討することを目的としている。
以下、第二節では広告と消費の関係が、従来は単純な図式でとらえることが可能であったのに対し、現在は、企業の経営戦略や顧客の選択的消費、メディアの技術革新など、より広い概念と関係づけて定義する必要性があることを主張する。つまり、企業と顧客の関係性構築が広告の基本的役割ととらえ、消費を、「その総合的な結果」であると考える。第三節では、広告と消費の定義をあらためる必要性、メディアの役割として「新しいメディア・ミックス」の可能性に言及する。第四節では、そのような変化におけるマス広告の役割を検討する。結論として、企業と顧客との関係の深度に応じたメディアの活用という意味での、メディア・バリュー・チェーンという概念を提示し、その下でのマス広告の新しい役割を論じる。